お手入れの前に:同じ素材でも製品によって適切な方法は異なります。製品の取扱表示がこの記事の内容より優先します。判断に迷う場合は安全にお手入れするためにをご確認ください。

手入れの方法を調べる前に、その靴が何でできているかを確かめてください。素材が分かれば、使ってよい道具と使ってはいけない道具は、かなりの部分まで絞り込めます。この記事は、他の記事で繰り返している「メーカー表示が優先」という前提を、あなたが手元の靴で実際に確かめられる形へ落としたものです。個別の症状への対処や作業手順は扱いません。扱うのは、表示のどこを見るのか、そこに書かれた素材名から何を読み取るのか、この二つだけです。

表示は靴の内側、箱、下げ札のどれかにあります

まず表示を探してください。消費者庁の雑貨工業品品質表示規程は、甲(アッパー)に合成皮革を使い、本底にゴムや合成樹脂を接着剤で接着した靴について、甲皮として使用する材料、底材として使用する材料、底の耐油性、取扱い上の注意という四項目を表示するよう定めています。[M01] この四項目は、靴の内側か、箱か、下げ札のいずれかに刷られています。手入れの前に最初に読むのはここです。インターネット上の一般的なケア方法ではありません。この規程は家庭用品品質表示法に基づくもので、同法は消費者が日常使う家庭用品について、表示すべき事項と表示の方法を定めた法律です。[M02]

四項目のうち、手入れの可否を決める材料になるのは甲皮材料と取扱い上の注意です。底材料と底の耐油性は、どこで履くか、油で滑らないかという話であって、クリームや洗剤を使ってよいかを直接には教えてくれません。ただし、接着剤で本底を付けた靴だと表示から分かること自体には意味があります。丸洗いのように接着部を長い時間水へ浸す作業を選ぶかどうかで、あなたはその情報を使えます。

靴の内側・箱・下げ札の表示を探し、甲皮材料から取扱い上の注意まで読み取る順番を示す図

甲に合成皮革を使った接着製法の靴だけが、この表示義務の対象です

この規程が対象にしているのは「甲に合成皮革を使い、接着剤で本底を接着した靴」という条件付きの区分です。すべての靴が対象ではありません。本革の靴、縫い製法の靴、そのほか対象外の品目に当たる靴では、先ほどの四項目が最初から刷られていないことがあります。その場合に残る手がかりは、メーカー独自のケア案内や、下げ札に書かれた個別の注意書きだけです。

対象区分から外れる靴の表示義務を横断して示す一次資料は、ここでは確認できていません。表示がないことだけで「義務のない靴」とは決められません。印字がかすれて読めないときも、購入店かメーカーへ問い合わせて、手入れに使ってよいものを確かめてください。

「革」と書いてあっても、本革と床革で同じ手入れが通るとは限りません

素材名は「何でできているか」だけでなく、「何をすると壊れるか」の手がかりです。日本皮革産業連合会は、本革、床革、合成皮革、人工皮革といった用語の定義を皮革用語辞典として公開しています。[M03] 表示に並ぶ名前は、この分類のどこかに当てはまります。

本革は、水と熱と強い摩擦で質感が変わりやすい素材です。仕上げに合った専用品を使えるかどうかを、取扱い上の注意で確かめてください。床革は名前に「革」が付きますが、本革と同じ扱いが通るとは限りません。仕上げによる差が大きいためです。表示にある一語の「革」がどちらを指しているのかは、素材名の欄だけでは決まらないことがあります。

合成皮革・人工皮革・織布は、避けるものが素材ごとに入れ替わります

本革、床革、合成皮革、人工皮革、繊維素材の表示から読み取れる手入れ上の制約を示す図

合成皮革では、加水分解が進んだ部分は手入れをしても元へ戻りません。強い溶剤と熱を避けることが、この素材名から読み取るべき制約です。進行の見分け方はsynthetic_leather_deterioration_limitで扱っています。人工皮革は、耐水性と洗濯の可否が製品ごとに分かれます。素材名だけでは決まらないので、取扱い上の注意の側を読んでください。織布やニットの靴では、組成表示もあわせて読みます。洗濯機に入れてよいかどうかは、そこに書かれた素材で分かれます。可否の判断はsneaker_washing_machine_ok_ngを参照してください。

なお、「人工皮革」と「合成皮革」という二つの呼称が製品タグの上でどこまで統一して使われているかを、この記事は確認できていません。メーカーによる表記のゆれの実態を示した一次資料に、今回は行き当たりませんでした。名前の一致だけで判断せず、取扱い上の注意に書かれた個別の指示を優先してください。

素材名が読めないまま、他の靴で効いたものを持ち込まないでください

素材名が分からない状態で、別の靴に使って問題が無かった洗剤やクリームを流用しないでください。「合皮っぽい」「本革っぽい」という見た目の印象は、表示の代わりになりません。取扱い上の注意だけを読み、甲皮材料と底材料を確かめないまま作業に入るのも同じです。四項目は組み合わせて読むために並んでいます。

目立たない部分での試し塗りや試し拭きも、この記事は勧めません。変色や劣化が起きるかどうかを表示の裏付けなしに確かめる行為であり、失敗した箇所は元へ戻らないからです。あなたが表示を確認できないなら、次にすることは作業ではなく、購入店かメーカーへの問い合わせです。

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